極私的ジャズ入門 1

どうしても犬の話が多くなってしまう。マイルスのインタビューもその2で足踏みだ。続きをと言う方、あと2,3日のお待ちを。
恐らく、このブログを訪れてくださる方の多くは「犬ファン」で、ジャズなんぞというマイナーな音楽はあまり聴かないんじゃないかな。できればそんな方々にも、ジャズの素晴らしさを味わっていただきたいと思う。そして、ジャズの醍醐味であるアドリブを楽しめるようになれば、犬と暮してる方の「人と犬の関係」もちょっと違うものになるんじゃないかなあ。だって、生き物の生活はすべてがアドリブ。訓練の本に書かれてることや、トレーナーのいうことはあくまで「テーマ・メロディー」であって、これを自分の犬に合わせてどうアドリブするかがジャズだからである。例えば、訓練の本には「リードを引っ張る場合」の矯正の仕方は出てるけど、止まって動かない時というのはほとんど出てこない。あ、また犬の話になりそうだ。テーマはジャズだったな。まあ、我が家の場合はすべてがアドリブばかりでメロディーが聴こえない、と反省はしてるんだけどねえ・・・。

さて、ぼくがはじめて聴いたジャズはなんだったのか、とよく聞かれるが、忘れた。ホントに憶えてないのだ。だが、東京オリンピックの前にはもう、マイルスやソニー・ロリンズなんていう巨人たちの演奏をレコードで聞いていたことは憶えている。(と書いていて、ふと気づいたのだが”30年聴いてきた”というプロフィールは間違いで、45年も経過している。愕然とするなあ!) 高校2年の時、江古田駅前にあったジャズ喫茶で、タバコを吸って難しい顔でジャズを聴いていたら、英語の教師に「もっと楽しそうに聴けよ」と話しかけられ、ギョ。喫茶店も、タバコも禁止だったが、ハイライトを5本あげることで、共犯者になってくれた。いい時代だったのだ。この店はライブハウスではなくてレコードを聞かせる店で、1杯のコーヒーで何時間いても文句は言われない。ただし、カップのそこにちょっとだけコーヒーを残しておくと言うのが”まだ帰らねえぞ”という意思表示だった。
幸か不幸か、死んだ兄の同級生の何人かがなりたてのプロのジャズ・ミュージシャンで、彼らが池袋や新宿のライブハウスに出演すると聴きに行った。彼らの演奏は、ジャズ・ビギナーが聴いてもレコードで聴くジャズよりはるかに臨場感が溢れていて(当たり前か、生なんだから)、「ヤルゾー」という欲望みたいなものがストレートに伝わってきた。曲名も、どう演奏しているかも分らないのだけれど、理屈じゃなく心を揺さぶられるのである。同じ曲を何度も聴いているうちに、そうかこの前聴いた時とは違うなあ、ふーん、これがアドリブっていうものなんだ。わー、同じ曲なのに別人28号だ、へー、ジャズって自由な音楽なんだ、とその魅力にとり憑かれていったというわけだ。
さらに魅力的だったのは、聴こうとしている音楽が「よく分らない」こと。ぼくは「分りやすい」ものに対しては本能的に疑いを抱く、アマノジャク。「よく分らない」ものが分るようになれば、確実に自分の世界は広がるはずである。ジャズを聴いてきてよかったなあと思うのは、この抽象的な音楽と向かい合うことで、形を知覚する(見える)ことと、形を認識する(理解する)ことの違いが分るようになったことだ。例えば、ジャズ以上に「分りにくい」と言われる抽象画。見る人はそこになにが描かれているのか、形として分らない。そうすると手がかりを拒絶されたような気がして、「この絵は分らない」となって投げ出してしまうのである。だが、よーく考えよう、お金は大事だよ、じゃなくて、描かれた形が分るということは、その絵が分るということなんだろうか?
では、「分る」というのはどういうことなんだろうか。書物が印刷された紙でなく、映画が映像を記録したフィルムじゃないように、音楽は空気を震わす音を意味するものではない。読める文字、見える映像、聴こえる音を通して、聴こえない何か、見えない何かを、洞察することが「分る」ということなのではないだろうか。乱暴に言うならば、作者、演奏者、絵描きがなにを表現しようとしたのかなんてどうでもいい。そんなもん、本人に聞いてみなきゃ表現者の意味するものなんて分るわけないのだ。多分、作者本人の意図とは違った受け取られ方で歴史に残る作品と評価されたちゃったものも、かなりあるんじゃなかろうか。要するに、聴き手、鑑賞者が対象になにを見て、どんな世界に行くことができるのか、それが全てであり、ジャズはその範囲が凄く広い自由な音楽だと言うことを、まずお知りいただきたい。
次回はもっと具体的な例や、ミュージシャンのことなどに沿って書こう。ん、お前の文はいつも前置きが多いって?まあ、それがぼくの人生なんだなあ、とこれは反省なんかしていない。

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この記事へのコメント

グー家
2006年03月01日 23:20
確かにジャズより犬の話を期待していたのですが、ちょっと感じるところがあったので、読むだけにしようと思っていたのにコメントしています(しかも2回目)。絵の見方の話で、以前駆け出しの美術編集者だったころ、門外漢の僕は一刻も早く鑑賞眼を養わなくてはと評論等を読みあさっていました。そして、ある評論家の文で目から鱗になりました。「絵は女を見るようにみればよい」という主旨。以来、誰が何と言おうが、自分の好みの女は一目で分かるもので、いい絵も瞬時に分かるもの、よく見なければ分からない絵は駄作と、いまだに頑なに守り通しています。文学もそうですが、ジャズも一緒だったんですね。ラジオやBGMで聞くのは好きですが、わざわざCDで聞くことはなかったけど、このブログの影響でそのうち聞くようになるかも…。因みにふとしたことで、この二三日ワーグナーばかり聞いています。

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