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zoom RSS メディアの自殺

<<   作成日時 : 2010/06/03 14:16   >>

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ぼくは「What are you doin'」と職業を聞かれると、「Music journalist」と答えることにしていた。同業者の中には自分のことを「ジャズ評論家」といって憚らない人もいたが、そういう人は「評論家」という言葉が世間で、とりわけ音楽家たちの間でどんなイメージを持たれているのか、まったく理解していないのではなかろうか。まあ、職業を言い表す言葉がネガティブに受け取られているから使いたくないのではなく、「○○家」というのは自分以外の他人が使うもので、自ら言うのは変だ、というのがホントの理由である。
職業は何ですかと聞いた時に「○○家」という答えが返ってくるような奴を信用しちゃあいけない!というのがぼくの持論。若いころから何人もの詩人とお付き合いさせていただいてきたが、ひとりとして自分を「詩人」だと言った人はいなかったし、大学の先生も自分のことを「大学教授」だとは言わなかった。まともな社会感覚・言語感覚の持ち主なら「詩を書いてます」、「大学で教えてます」というように、ぼくの場合だったら「ジャズについて原稿を書いてます」と言うのが普通の言い方だと思うのだ。
そんなわけで、ぼくの職業はミュージック・ジャーナリストということになっていたのだが、「どいつも、こいつも」のPostで書いたようにジャーナリズムの退廃が暴かれてしまったので、このジャーナリストとかジャーナリズムという言葉も恥ずかしくて使えなくなってしまいそうだ。だって、大新聞やテレビ局の政治担当者や幹部が官房機密費から「「毒饅頭=現金」をもらったり、酒池肉林の接待をうけていたんだぜ!

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先週に発売された「週刊ポスト」のトップ特集は、いまやマスコミのタブーのひとつになった官房機密費汚染と支持率調査の問題であった。特に官房機密費問題については、今年のかなり早い時期からネットなどでささやかれていたのだが、大手メディアのニュースとして報道されることはなかった。
ところが、元官房長官の野中広務氏がTBSテレビの番組に出演、新聞記者やテレビ局の政治報道部局、政治評論家などにいわゆる「付け届け」という形で機密費をばらまいていた実態を告白するに至って、まず記者クラブ問題などのマスコミ周辺の慣れ合い改革に取り組んでいる上杉隆氏がダイアモンド・オンラインの「週刊・上杉隆」で採りあげ、次いで週刊ポストと組んで問題を明らかにし始めたのである。まずは「週刊・上杉隆」のバックナンバーをお読みいただければ、この問題の深刻さがお分かりいただけると思う。
http://diamond.jp/articles/-/8183
氏はここで、野中告白以降にこのことについてきちんとした記事にしたのは5月18日の東京新聞特報欄だけで、あとの各社は沈黙を守っていると指摘している。そしてその理由を、「答えは言わずもがなである。連日のようにテレビや新聞に登場しては、至極立派な発言を繰り返している至極立派なマスコミ人の多くが、機密費の「毒饅頭」を食らっているからに他ならない」と断言しているのだ。その中には人気テレビ番組で「立派なことを言っている」政治評論家の三宅某や俵某も含まれている。
野中告白によると金を返してきたのは田原総一郎だけ。またこの告白に次いで、元参議院議員の平野貞夫氏がテレ朝のBSチャンネル「朝日ニュースター」でメディア関係者へのバラマキを証言しているのだ。なぜ2人がこの時期に、何を思って告白するに至ったか、田原氏の名前だけを出したのはなぜか、などの疑問は残るが、現ナマをばらまいた張本人が言っているのだから、貰ったと言われるメディア側はホントはどうなのか、説明責任(メディアの好きな言葉である!)があるはずだ。
(と、ここまでのんびり書いてきたら、鳩山&小沢の辞任のニュースが。民主党には、マッチポンプ・メディアの火つけを鵜呑みにした期待などしていなかったのだが、やっぱりねえ、という感は否めない)

戦後政治史上、画期的な政権交代が実現し、民主党政権が誕生した時にはすぐにでも素晴らしい社会が出来るような報道をしてきた新聞・テレビの大手メディアは、数か月もしないうちに新政権のあら拾いを始めた。このネタとなったのが「政治と金」というテーマで、鳩山の偽装献金疑惑と小沢の政治資金の不透明な流れであった。こういう民主党叩きの材料を与えてしまったは政権党としてドジ。だが多くの国民は、メディアがなぜこの程度の問題で大騒ぎし、トップ2人を罪人扱いしなくてはならなかったのか、などとは考えない。年金・医療・福祉などをめちゃくちゃにしてさっさと引退した小泉純一郎が近所にくれば、我先にと握手なんかして喜ぶ程度の「庶民」、「大衆」なんだから、彼らを反民主に世論誘導することなんぞはたやすいことなのだ。
大手メディアが必要としているのは広告の獲得と、そのための視聴率、販売部数のアップ、そして知られざる既得権益を守ることである。そのためには、「やらせ」も「誘導」もいとわないし、悪魔とだって手を結ぶだろう。
昔から「犬が人を噛んでもニュースにはならないが、人が犬を噛めばニュースだ」といような価値観で出来上がってきた世界は、犬を噛む人を探し、時にはそういう人を作り出すことまでするようになってしまっているようだ。だから本来、真面目なニュースとして伝えられるべきこともバラエティー番組のように脚色されてしまうのである。

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週刊ポストが第2特集で取り組んだのが、世論調査という名の誘導手段のからくり。まるで株価情報のように毎日「何ポイント下げ」と報じるのだが、その数字がどのような方法・設問で得られたのかをきちんと出しているところは少ない。この記事では、最後の「どの政党を支持しますか」という問いに至るまでのいくつかの問いを挙げ、いわゆる誘導尋問効果によってメディアの意図する結果に導くやり方が紹介されている。
新聞や雑誌以上に怖いのが、テレビ局による恣意的な編集だ。先日の普天間基地移転日米合意をうけた抗議行動がニュース番組で伝えられた。激しい雨の中、普天間基地を取り囲んだ沖縄の人々にカメラとマイクが向けられる。「最低でも県外と言ってきたのに、また沖縄にしてしまった鳩山さんをどうお考えですか?」。こう聞かれりゃあ「裏切られた」とか「腹が立ちます」とか、いうシンプルな答えが返ってくることは明らか。そして最後に「もう支持しません」という人を持ってきて、「沖縄の人々の心は鳩山内閣、民主党から離れました」とやるわけだ。
沖縄の知人が言った。
「おれたちはそんな簡単に基地がなくなるなんて思ってやしないよ。今回はできなかったけどさ、県外移転、海外移転という考えを戦後初めて言ってくれた鳩山由紀夫に感謝してるくらいだ。そんなことを考えてくれた総理大臣発言があればこっちの人は期待しちゃうでしょ。だから辺野古に戻ったと聞いた時のああやっぱりという落胆と、怒りが強くなっちゃうんだ。テレビの連中が描いた筋書きと、こっちの人が思ってることは90度違ってる。正反対の180度じゃあないけどね。現地の集会にくればすぐに分かると思うけど、温度も色も、テレビで伝えられる姿とは違うんだ」
初めに結論ありき、でほとんどの記事や番組を作っているのが日本のメディアの実態なのだ。だが、国民がどれほどこうした恣意的な姿勢を知っているかというと、まあ、ほとんど知らないだろう。その無知のつけは国民ひとりひとりが負うしかないのである。

こうしたメディアの退廃を象徴する「事件」が、マスコミへの官房機密費ばらまきとその報道である。自分に都合のよい状況を作るために金品を利用するなんてことは、掃いて捨てるくらい当たり前のことになっている日本の社会だが、普通はそれがバレた時には相応の責めを負わなくてはならない。
ところが、政府・国家権力が直接手をくだした「贈収賄」なのに、新聞社もテレビ局もこの事実を伝えようとしないのである。今般の政変が「政治と金」から出発し、手続きのミスさえも極悪犯罪のように追及してきたメディアが、「メディアと金」の問題についてだけ黙殺というのは一体どういうことなんだ!政局の激動に隠れていれば時が解決してくれる、とでも思っているのだろうが、ネット社会の情報伝達量を甘く見ちゃあいかんぜよ。
新しい内閣ができて、参議院選挙が終わればバラエティ・ニュース番組のネタは尽きる。その時は、このメディア存続の根幹にかかわるこの問題をクローズアップするチャンスとなるだろう。もしメディアが黙殺を続けるとしたら、それはメディアの自殺そのものなのである。


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内 容 ニックネーム/日時
jazzage109―池上比沙之様。
前略。
はじめまして。
eeewww1と申します。
twitterでフォローさせていただき、やっとブログの方へもお邪魔いたしました。
まだ二三のエントリーしか拝見いたしておりませんが、Jazzの事、ワン達の事、そして社会性あふれるご提言、これからもお邪魔させていただこうと思います。
最近、ジャーナリズムという言葉が嫌いです(笑)
興業新聞の社主が、時の権力と仲良く食事をしたり、大連立(苦笑)をしかけてみたり、系列のT.V.では、これまた仲良し政治評論家という名の政治部卒の爺さま達が、どう見てもというような方向へ面白おかしく誘導する。
切り取られた枠で示すニュースのみならず、バラエティーという名のお遊びにさえ恣意的な意図を感じてしムのは、私の悪い癖かもですが・・・。
【リテラシー】、【クリティカル・リーディング】、とにかく自分の頭で考える。求められるのは、この姿勢と、この姿勢を保つ事、そしてもっと大事なのは、僕ら世代がこれを伝え教えて(僭越)ゆく事だと思います。
それにしても、最近の学生は運動しないのかなぁ〜、などと少し寂しく思っています(かくいう、私は白け世代ですが)
それでも、69年佐世保、70年安保、ものを申したつもりですが・・・。
とりとめのない話、でした。
これからも、お邪魔させてください。
ご挨拶まで。

草々。

追伸。
気付きました!
【池上比沙之】
FMレコパルや、スィング・ジャーナルやで、見た事のある記号でした。
ご無礼のほど、お許しを。
ew1
2010/09/06 16:31
ew1さん。コメントありがとうございます。
佐世保〜というとほぼ同世代でしょうね。JAZZを媒介としてこれまで言葉をかわすこともなかった人と共感しあったり、何十年も音信不通だった人と再会したり、ITメディアの恩恵です。
ぼくのツイッターやブログでは、不快な匿名投稿がほとんどありません。これも;
>そしてもっと大事なのは、僕ら世代がこれを伝え教えて(僭越)ゆく事だと思います。
ということではと思っています。
また遊びに来てください。
IKEGAMI
2010/09/06 19:25

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