変革の“志” 1

今年のNHKの大河ドラマは坂本竜馬の生涯を描く「竜馬伝」だ。土佐藩の下級武士の家に生まれた竜馬が、どのように幕末の混乱を生き、近代日本の扉を開くことに貢献した人物になったか、これまで放送された4話を見ただけでも竜馬の非凡な発想がうかがえて、次の放送が待ち遠しくなる。変革者、革命家にありがちな悲壮感がなくて、むしろその反対の脳天気な性格がなにより面白い。放送当初から高視聴率をキープしているのは、あながち竜馬役の福山雅治に対する女性からの人気だけでなく、閉塞からの出口を求める人々の琴線に触れる感覚を坂本竜馬という人間がもっているからなのではあるまいか。とにかく、日本人は竜馬が好きなのだ。

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面白いことに、ソフトバンクの孫正義さんが熱狂的な竜馬信者で、このドラマがオン・エアされる日曜日に孫さんのツイッターにアクセスしてみるとその興奮振りがリアル・タイムで伝わってくる。ドラマが始まる数時間前から「喉が乾いてきた。ドキドキ」と書くくらい入れ込んでいるのだ。
それもそのはず、孫さんは高校生の時に司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を読んで感激し、自分も「脱藩」すると言って久留米大学付属高校を中退し、アメリカに渡っている。常識的に考えれば、いささか直情径行気味のこの行動は“若さ故の暴走”としか思えないだろうが、人生の岐路においては哲学的直観とでも言うべき他人には理解不能な衝動が大きな役割を果たすものだ。孫さんは高校生の時に、自分の現在の環境・地位・財産・権益を捨てて、新しい世界に飛び込んで行ったのである。そうした彼の“志”はソフトバンクの事業に確実に反映されているように思える。
CP、Uの演算速度が200倍になっても、それを使って何かをする人に“志”がなければ、ただの便利な機能、単純な文明の進歩にすぎない。竜馬が亀山社中を興し、貿易によって「金儲け」したのは、それを使って実現させようとした崇高な目的があったのだ。
孫さんは、自分が今やっていることは「経営」ではなく「事業」なのだとツイッターに書き込んでいる。世の中全体が合理性と目的性の奴隷となって、戦略よりも戦術のもてはやされるご時世に、こういう経営者がいることは社会の財産である。会社の経営者、ビジネスマンは、自分が何故生きているのか、その理由をよーく考えていただきたいものだ。

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