ブログ版 マイルスとの2時間(1)  

ぼくがJAZZについて雑誌に書いたもののなかで、「あの雑誌とってないの?」とか「あったらコピーしてよ」と言われるのが、マイルス・デイヴィスのインタビュー。月刊「プレイボーイ」と「JAZZ LIFE」に書いたものだが、ぼく自身にとっても鳥肌が立つような時間であった。要望にお応えして、なんて言うほど要望されてるわけじゃあないけれど、今は亡き帝王からもう一度エネルギーをもらうためにちょっと手を入れ直してこのブログに再録してみることにしたい。

ブログ版 マイルスとの2時間(1)

偉大なミュージシャンはたったひとつの音を出すだけで、音楽の全体像をイメージさせてくれる。ソニー・ロリンズは”ブワァー”とひと吹きするだけで充分に官能的だし、ビル・エヴァンスの高音部の一音は、美しい薔薇の棘のような危険な魅力が溢れている。ではマイルス・デイヴィスの場合は・・・ひとつの音すら出すことなく、立っているだけで、あるいはステージ上を歩くだけで、あの複雑で屈折した音楽をイメージさせてくれるのだ。この感覚は一体何処から来るものなのかと、我ながら不思議な気分になって、ピアニストの渋谷毅さんに聞いてみたことがある。
「ワン・フレーズ演奏して”JAZZだあー”って感じさせてくれる人っていますよねえ」
「うん、いる」
「ぼく、時々渋谷さんのどうでもいいような最初の”ポーン”っていう音に”わー、JAZZ”って感じることがあるんだけど、あれどうしてなんでしょうね?」
「あ、あれね。企業秘密なの」
ま、この一言でピットインの楽屋は大笑いとなったのだが、
「じゃあ、立ってるだけで音が聞こえてくるマイルスみたいのは?」
と聞いたら、とんでもない答えが返って来た。
「それはね、地球上の出来事じゃあないんだよ。どっか違う惑星の出来事なの」
渋谷さんの眼も、そこに居合わせたミュージシャンたちの眼も笑っては居なかった。
ぼくは異星人ととんでもない2時間を過ごしてしまったのだ。


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