On The Road with Chick Corea<1>

下の画像はJAZZピアニスト・チック・コリアのオフィシャルWEBトップページである。チックと彼の音楽に興味のある人はhttp://www.chickcorea.com/をクリックして、チック自身がエッセイを書いているBLOGをお読みいただきたい。かなりこまめに更新しているようで、ぼくのBLOGとは大違い。とてもわかりやすい英語でチックの「今」に触れることができる。チックは現在,ジョン・マクラフリン(g)、ケニー・ギャレット(as)、クリスチャン・マクブライト(b)、ヴィニー・カリウタ(ds)との「Five Peace Band」でヨーロッパ・ツアー中。チック自身、ツアー・マネージャーによるツアー・レポートはミュージシャンのツアーに付き合っている気分にさせてくれるのである。
東欧から10月下旬にトルコに入り、2都市を終えてギリシャ経由でオランダ、ベルギー、ドイツ……。タイトなスケジュールは11月末のロンドンまで続く。このツアーからのレポートを読んでいるうちに、30年ほど前にチックのバンドに付き合ってアメリカ東部を回ったり、日本ツアーに同行した記憶が甦ってきた。

画像


「Road」と呼ばれるツアーは、ミュージシャンにとって日常と非日常のはざまにあるので、それをを楽しめるタイプと苦痛に思うタイプとに分かれる。ポール・サイモン主演の映画「One Trick Pony」はStuffのメンバーが出演し話題になったが、ストーリーはRoad暮らしのミュージシャン生活の悲喜交々。家をあけてばかりいるために引き起こされる家庭内の軋轢がリアルに描かれているのだ。もしDVDになっているなら音楽ファンにお勧めの作品である。チック・コリアはというと、完全にRoadを楽しみ、そこで音楽生活のエネルギーを充電している感がある。ツアー先の文化や歴史に興味を持ち、常にそこで暮らしている人々の「普通の生活」を理解しようとするのだ。

ぼくはそんなオフ・ステージのリラックスしたチックと、様々なことについて真剣に語り合ったり、冗談を言い合ったりしながら互いの理解を深めていったのだった。彼のRoadは常に笑いがあった。

札幌のラーメン横丁(そのころはうまい店があった)に彼の大好きなラーメンを食べにいった時、北海道の方言を教えろと言われたので、「ええんでないかい」というのを現地のイントネーションで教えるた。するとその晩のステージで、最初の曲が終わるとすかさずやったのだ。腕組みまでして「ええんでないかい」!あまりのジャスト・タイミングに満員の聴衆は一瞬シーンとして、次の瞬間ドッと沸いた。するとこのオチャメなバンマスはステージ袖で見ていたぼくに、親指を立てるのだ。

ある時は「誰かがソロでやってる時、普通はステージの袖で休んでて何もしないよねえ。あの休みを利用して何かできないかなあ」という質問がきた。ぼくはいい加減に「ソロの後ろで、ステージを走り抜けるっていうのはどう?」と答えたのだが、その夜のステージで早速実行に移された。チックだけではなく、メンバーがかわるがわるソロ奏者の後ろを走り抜けるのだ。「ははは、意味がないアクションって面白いだろ」と得意気。まるで自分のオリジナル・アイデアのような顔であった。

ショッピングに出かけた時、呉服屋の前で立ち止まったチックが「キモノ・ドレスって高いのかい?」と聞いてきた。それはクオリティによってピンキリで、数百万円するものだってある、着物だけではだめでオビ・ベルトだって高い、いろんなオプショナル・キモノ・サプライも必要だ、と説明すると「フーン、ボストンのmamが欲しがってるんだけど、今回は無理だな」と浮かぬ顔。多分、よし今度のJAPANツアーで買ってきてやる、とか約束したに違いない。そこで年齢、体型を聞いたところ小柄な日本人に近いことがわかったので、母親に電話してもう着なくなった着物と帯、長襦袢など、着物一式をもらうことにしたのである。嬉しそうに着物を持ち帰ったチックであったが、はたして1ヶ月後、ボストンのmamからお礼の手紙が届いた。「うちの息子は私の夢をすべてかなえてくれます……」という微笑ましい“子誉め”レターだった。

こんな楽しいRoadの時間をチックと持てるようになったのは、ぼくがジャズ雑誌に書いたコンサート評がきっかけだ。ニューヨークのタウンホールでの、新旧リターン・トゥ・フォーエバー(以下RTF。この時、新RTFは奥さんのゲイル・モラーンが加わったばかり)の2部構成のコンサートである。第1部の演奏は実に楽しいチックらしいものだったが、ゲイルが加わった第2部は愛妻をどうバックアップするかということだけに彼の心が行っているように感じられたのだ。ぼくはコンサート評で第1部の演奏を細かく紹介した後、第2部について「特定の人に向けられて閉鎖した演奏は批評の対象となる音楽とは思えないから、ここで書くことは何もない」と書いてしまった。
数ヶ月後、雑誌気付けでチックから手紙が届いた。「I  read your writings. Very interesting point of view! Please touch me next month in Japan」という内容であった。来日したチックに会いにホテルに行くと、ロビーに知り合いの編集者がぼくを待っていた。
「チックからあなたが来るって聞いてまってたんです。今日これから時間があったらインタビューしてくれませんか?」 ん、なんだ、なんだ。どうなっているんだ???

実はこの時期、チック・コリアはマスコミのインタビュー取材を1年近く断り続けていた。ぼくがコンサート評を書いた雑誌がタウンホール・コンサートから半年後、日本ツアーでやってきたチックにインタビューを申し入れたら、「IKEGAMIというジャーナリストとだったらいいよ」と言ったらしいのだ。
で、急遽インビューということになったのだが、当時のぼくの英語はカタコト。(まあ今だってたいして変わりはない。ガタゴト英語だ)ロビーに現れたチックに、通訳が欲しいといったら「ははは、大丈夫だよ。ぼくの日本語より上手だよ。さあ、いまからインタビューしてくれ!」と言われてしまった。悪戦苦闘のインタビューはとてつもなく面白い内容となったのだが、それについては項を改めたい。長くなりすぎる。それでなくとも、ぼくのブログは文が長いのだ。

インタビューを終えてコーヒー・ショップで一息ついていると、チックが戻ってきた。
「IKEGAMI、クラシック音楽にも詳しいって聞いたんだけど、ホント?」
「まあ、普通には聴いてるけど・・・」
「作曲家で好きなのは誰」
「うーん、バッハ以前、バルトーク以降」
「ははは、いい答えだ! でもモーツァルトだって聴いてるだろ?」
「まあ、普通には」
「今度、モーツァルトのピアノ・コンチェルトやるんだけど、何番がいいと思う?」
「それだったら20番k.466に尽きる」
「ふーん、誰が弾いてるのがいいのかな?」
「クララ・ハスキル!」
「だったら、この日本ツアー中にレコードをコピーして聴かせてよ」
お安い御用である。

というわけで、チックとぼくのコミュニケーションは新しい局面を迎えることになった。
その内容を紹介しようとすると、いつまでたってもPOSTを立てられないので、続きは<2>ということで。





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この記事へのコメント

chi-B
2008年11月04日 13:04
So excitingです。プレッシャーをかけては申し訳ないから言ってはダメよと思いつつも、続きがメチャ楽しみdes。IKEGAMIさんは英語でも記事をお書きになっていたんですか?何語でも、IKEGAMIさんのこれまでの作品を読んでみたいと思っています。それは、レコードを手に入れないと無理なんですよね?(あたりまえか…愚問でした)
IKEGAMI
2008年11月04日 13:23
早ッ!
ぼくの英語力で原稿は無理です。何本か英訳されたものはありました。レコードのライナー、原稿など過去のものは2,3手元にあるくらいで、消えてなくなる快感にひたっています。そう、音楽の演奏、オリンピックと同じでリアルタイムの先端で生まれて消えていくってのがぼくには合ってるんでしょうね。
マイルスのが完結したら(最終回、遅れててごめんね!)、もう一本、昔の長編に手を入れて連載する気でいます。誰かって?フフフ、内緒。
masae
2008年11月05日 22:49
本当にSo exciting!!
その頃のチックに逢いたかったなあ~
続編を楽しみにしています。
chi-B
2008年11月06日 00:50
IKEGAMIさんの記事を読んでから気になって仕方なくなり、Clara Haskil at MontreuxのMozart Piano Concerto K.466-1,2,3,をyoutubeで見つけて聴いてきました。K.466-2というのが好きでした。クラシックは、たま~にNHKで放送しているのを見たりする程度ですが、国によって音の世界・ネイロ?がまったく違うのが興味深いです。masta.Gさん、大学の頃でしたかクラシックのトランペットもやってたんですヨ。今の姿からは想像できないですよね。笑 オーケストラにも一時入っていたとかで、ご実家から送られてきた写真を見ると本当でした。ブログの続きはユックリ待っています。実はP-FUNKのお話もすごく楽しみにしています。気が向いて、そんな風が吹いたら…お話聞かせて下さい。私はGeorge Clintonが大好きです。Princeも彼らと一緒に何曲か作っているんですよ。ある種、マフィアの饗宴みたいな匂いを感じて、それがまた素敵♪です。あ、脱線失礼しました。では、またどこかで。ONE!
IKEGAMI
2008年11月06日 05:06
コメント、ありがとう。
このPOSTの<2>はもう「編集中」に入ってます。ぼくとしては異例の早さですが、さてどうなることやら。
>masaeさん
笠間で長年の疑問が解けました。ミケランジェリのサンプラのコンサート、誰かと行ったような気がしてて、それが誰かを失念してました。masaeさんだったとは!
>Chi-Bちゃん
コメントも早いが、行動も素早い!そうですか、Youtubeにあるならぼくも聴いてみます。多分、masaeさんも聴くことでしょう。
P-FUNKについて、POSTとして書けるのはハーレムにあるアポロ劇場でのコンサートの感想くらいかなあ。ま、Bud Mother FuXkingなとんでもなく素晴らしいコンサートでした。
masae
2008年11月06日 09:59
早速U-tubeで聴きましたよ。PCで音楽を聞くと音が良くないと文句を言ったら息子がPCのイヤーホーンの端子とBOSEのWAVE RADIO CDを繋いで少しはマシな音で聞けるようにしてくれましたが
やはり音が悪い。とても残念。

IKEGAMI
2008年11月06日 10:34
そりゃあ、しょうがないんです。端っから音質については期待するほうが無理!あと何年かしたらハイ・フィデリティPCとかが出るでしょうね。原理的には簡単ですが、問題はコスト。なにしろ時代は「99市場」、「100円ローソン」ですから。
20番k.466、ぼくもyoutubeで聴いてみました。何年振りかでモーツァルトにしては異例の暗い1st Mov.と、一転明るく優しくなる2ndの対照をしみじみと。きょうは映画の「アマデウス」でもDVDで観ようかと思ってます。
chi-B
2008年11月06日 13:02
もうお気づきかも知れませんが、youtubeには、今回話題のチック・コリアさんのK.466(日本のオーケストラと一緒に)、そして同じコンサートのキース・ジャレットさんの弾いておられるk.488というのも見つけまして、それも昨晩聴きました。気付いたらもう朝方でした。lol ビデオの下に書かれた視聴者のコメントをふと読んでみると、クラシックのファンかプレイヤーかと思しき方々から辛口コメントが数点あるのですが、ピアノを弾けない私などから見たら、お二人とも新しい試み(だったんですよねぇ?きっと。)Unusualな状況でのプレイをとても無邪気に楽しんでいるようで、しかも思いっきり真剣な目をして弾いている姿が魅力的で、見ごたえ聴きごたえありました!Claraさんのはawesomeでした~。どちらも素晴らしいです。'nuff respect for genuine PLAYA's,aiight!
IKEGAMI
2008年11月06日 16:50
はい、あの演奏は'85 2月1日第1回トーキョー・ミュージック・ジョイのクロージング・ナイトの演奏です。
masaeさんはこのチックの演奏が忘れられないと仰ってました。そこで、チックのことを書こうと思い立ったわけです。この夜のこと、チックのクラシック曲の演奏については<2>で書きます。本人とかなり緊張した対話もしていますので、本邦初公開しようかな、と。
ちょうどChi-B & Masta.Gの音楽をmasaeさんにネットで聴けるよと紹介しようと思ってたところ。(メールしますね。このブログのLINKからも飛べますが)こうやって、昨日まで知らなかった人同志が音楽をテーマにコミュニケートできるって、まんざら世界は捨てたもんじゃあないなと、今更のように感じている次第。
Yes, we can!ですねえ。
IKEGAMI
2008年11月06日 16:54
あ、書き忘れてた。
Masta.G、クラシックやってたと思ってました。理由はないんだけど、なんとなく、勘で。
Chi-Bちゃん、Gさんにモーリス・アンドレのトランペットどうですか、って聞いてごらん。(この人のもyoutubeにあるだろうなあ)
masae
2008年11月06日 20:59
中野サンプラでのミケランジェリ、他の曲は何を聴いたか全く覚えていないのですが、夜のガスパールが凄かった!確かやっと取れた追加公演のチケット。なんでクラシックのコンサートがサンプラなんかでと不満タラタラだったのですが、音響など最悪の条件だったにもかかわらす「夜のガスパール」は良かった!休憩時間にグレングールドの翻訳等なさっているKさん、今は亡きNAGASAKA氏ともお逢いしましたよ。Kさんから中村紘子さんを紹介して頂いてちょとお話をしましたっけ。
中学生の頃のピアノの先生がMOZART好きで毎日毎日MOZARTのソナタばっかり弾かされていたのですっかり飽きてMOZART嫌いになっていたのですが、チックのコンチェルトを聴いて目から鱗が落ちた状態!IKEGAMIさんがあのコンサートに携わっていたとは!世の中不思議なご縁があるものですねえ。

chi-B
2008年11月07日 00:53
IKEGAMIさん、さすがに凄い勘!モーリス・アンドレさんの事、Gさんに電話で聞いてみました。何度かLIVEにも行ったらしくて、なんと今も手元にサインを持ってるそうです。1973年4月17,19日の大阪インターナショナルフェスの時のもので、フェスティバルホールで”これは、ちゃんとチケットを買って”行ったと言ってます。(笑)Gさんの実家はこの今は改装中の歴史的ホールの近くで、子供の頃から忍び込んで遊んでいたらしく、喫茶店からの抜け道や楽屋への入口もみな把握していたそうで、ここでハービー・ハンコックにもマイルス・デイビスにもサインをもらったらしいです。「あの赤絨毯は僕の青春やねん。」との事でした。youtubeにも映像がいっぱいありました。うわ~っと釘付けになりますね。ディジー・ガレスピーさんと一緒に出ているのが面白いです。いきなり同じようにトランペットを上向きに曲げて、みんなビックリ仰天して爆笑して、その後のプレイに会場がウットリして…。良い音楽を教えてもらって楽しいです♪
>masaeさん、お時間あるときにでも私たちの音楽を聴いてみて下さいませ。宜しくお願いします。m(_ _)m
masae
2008年11月07日 22:19
chi-BさんのURLお送り下さってありがとう!
早速聞かせていただきました。ITの恩恵ですね。

>chi-Bさま
What a fantastic song is it!


chi-B
2008年11月07日 22:53
masaeさん、I am very honored.です。 ありがとうございました。いつかLIVEを見て頂けるよう、Body&Soulで精進しておきます。IKEGAMIさん、ありがとうございました。LOVE!
IKEGAMI
2008年11月09日 07:58
おっと、おふたりのコメント見逃してた。
また新たなコミュニケーションが生まれましたね。masaeさんが茨城広報部長に就任です。
これまで食わず嫌い、いや食わず知らずだったmasaeさんにSLYとかを聴かせたらハマルと思いますよ。
>masaeさん
この前に推薦してくださったファジル・サイ、12月に4夜連続コンサートがあるので聴きに行こうと思ってます。どのプログラムにするか迷ってるところ。パーカッションとのデュオ・インプロヴィゼーションもあるのですが、グルダのジャズみたいなことはないだろうなあ。でも、コパチンスカヤとの「クロイツェル」にするか、バッハのソロにするか、モーツァルトの21番のコンチェルトにするか、うーん、困った。
アリス=紗良・オットもいいらしいですね。今日、CDを買いに行こうかと…。音楽の秋だあ!
masae
2008年11月09日 16:43
グルダのジャズと比べるのは、まだ可哀そうな感じですが是非聴いてください。私は11月29日つくばノバホールのコンサートに行ってきます。プログラムはムソルグスキー展覧会の絵、サイ:ブラックアース、パガニーニジャズ・トルコ行進曲;ジャズ風、3っつのバラード、サマータイムファンタジー、ガーシュイン:ラプソディーインブルーです。
トルコ人の弾くトルコ行進曲、ちょっと面白そうじゃありませんか?
主催つくばコンサート実行委員会,共催つくば都市振興財団とやらで、チケット代がめちゃ安!A席3500円、B席2500円、C席1500円!ノバホールは音響もまあまあですし
聴衆のマナーも良い。聴いてきたらご報告しますね。
IKEGAMI
2008年11月09日 18:12
ぼくはグルダのジャズより数段上じゃあないかと予想しているんですよ。
フリードリヒ・グルダについては、このPOSTの<2>で言及しようと思ってたところ。チックは「ミユンヘン・ピアノの夏」の常連で、グルダと親交がありました。そこから馬鹿な話が起りかけた。フフフ。
ぼくは彼の姿勢は大歓迎でしたが、出された音としてのジャズには下を向かされました。学生時代に文化会館で聴いたベートーヴェンとアンコールのモーツァルトの演奏は、いまだに胸の中で鳴ってます。
しかし、つくば・ノバホールの演奏曲目、なんとも興味深い!つくばエクスプレスに乗ってノバホールに行きたくなりました。
masae
2008年11月09日 19:43
つくばコンサート実行委員会はつくば市民がノバホールを拠点としてボランティアで始めたコンサート委員会のようです。20年位の歴史の有る団体のようで守谷に越してくるまで知りませんでしたが、ベルリンフィル木管五重奏団、小菅優、村治佳織、村治奏一、ボリスベレゾフスキー、フェルメールカルテット、アンドレワッツを1500円又は2500円で聴きました!アンドレワッツも良かったわよ。ショパンを弾いても、血のなせる業かスイングしちゃうのよね。過去には秋吉敏子も呼んでいたそうです。
快速だと秋葉原からTXで45分。いらっしゃいませよ!

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