神様のブログ~渋谷毅さんのこと

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LINK~INTRODUCING!でWEBを紹介させていただいた「ピアノも弾ける神様」渋谷毅さんは不思議な人だ。「渋谷さんは○○○な人」とひとつの方向で語ることのできない不思議な人なのだ。ある断面から渋谷さんを語ると、有機的に結びついた複雑な全体からどんどん遠くに行ってしまうのである。

渋谷さんの演奏は、なにも特別なことはしていない。大向こうを唸らせる超絶技巧でピアノを弾きまくるわけじゃないし(むしろ正反対,と言うと誤解されちゃうか。まるで技巧のない下手なピアニストって思われかねないよね)、原曲のメロディーを無理やり自分の側に引き寄せるようなこともしない。当たり前に、淡々とメロディーを弾いているのだが、もうそれだけで音が他の人と違う響きをもってこちらにやってくる。厳密な「解析」をすれば、その違いを説明できるのかも知れない。でも響きの美しさの前では、解析なんぞは「無粋」なものだよ、そんな努力をするなら全ての力を抜いて音の前にいたほうが楽しめるよ、と言われている気分にさせられて、わーっとか、へーっとか言いながら、20年以上演奏を聴かせていただいているのである。

普通、ジャズの魅力は「アドリブ」と呼ばれるインプロビゼーション(即興演奏)にあると言われている。原曲を分解して自分の文体で翻訳する作業だ。したがってジャズの演奏は、一人一人、一回一回、原曲が姿を変え「だれだれの○○○」という曲になるわけだ。自作のオリジナル曲でさへ、「○月○日の○○○」という曲になる。だから、ジャズはライブが命なのだ。では、渋谷さんの新しいCD、『エッセンシャル・エリントン/アイランド・ヴァージン』をお聴きいただきたい。 (このCDは2枚目、6年ぶりののエリントン曲集。1枚目はスイング・ジャーナル誌ジャズディスク大賞日本ジャズ賞に輝いた名作だが、渋谷さんの受賞は遅すぎ!日本のジャズ・ジャーナリズムの怠慢を象徴する受賞であると言っておきたい)
ひと言でいうなら、ここで聴ける演奏は一方的な翻訳ではなく、デューク・エリントンと渋谷毅がサウンドの中で融けあっているのである。まあ、ミュージシャンが人の前で演奏するのは、音楽という装置によって自分を表現したい、つまり「自分の○○○」を作りたいという気持ちの純粋な現われ、そしてそれを多くの人に伝えたいという気持ちの現われだろう。ところが、渋谷さんからはそういう余計な(?!)「欲」のようなものがほとんど感じられないのだ。
エリントンの素敵な曲があるので、ちょっと一緒に時間を過ごしてみようかな、という感じと言えばいいだろうか。そこには渋谷さんといつも音楽を演奏している仲間も一緒にいる。渋谷さんがその仲間に、「こうして」とか「ああして」と言ったことはない。
欧米のミュージシャンでこういう表現方法を持つ人は、ぼくの聴いてきたなかではギル・エバンスくらいのものだ。それは、自己主張の強さを子供の頃から教えられて育つ「自我」の違いから来るものなのだろう。そう、渋谷さんの音楽と演奏の方法は、社会的な価値観にも音楽にもある種の行き詰まり状態にある欧米の人々にこそ聴いてもらいたいのである。

このように渋谷さんの音楽はミステリアスな魅力に満ちたものなのだが、渋谷さんの趣味の世界はもっと不思議。電信(いわゆるトン・ツー)を使うアマチュア無線、そしてコンピューター。試しにWEBを覗いていただきたい。ブログにはこの不思議なピアニスト・作/編曲家にしてバンド・リーダーならではの文章を楽しむことができるのだ。
小川美潮さんとのコメントのやり取り(オープン・メディアのブログだから、紹介しちゃって問題ないよね)は、まさに渋谷さんのサウンドが響いている。
「美潮さんも絶好調で、いっしょに演奏していて「こんなに楽しくいいんだろうか」と何回も思いました。また、ただ淡々とピアノを弾くその向こうに音楽は突然現れる…んじゃないかというようなことも頭を過ぎって、こういうとき、ピアノを弾いていてほんとによかったと思います」
ぼくは渋谷さんの音楽だけでなく、文章も大好き!
「面白いサイトを紹介しようと思いついた。
この面白いというのがほんとに面白いかどうかは見る人によって違うのは当然だから余計なお世話といえばその通りで、しかしそういうことでいえばここで書いている全てが余計なお世話である。
というようなことは置いといて」
というような文を読んで笑った後、あまりにおかしかったので思わずコメントを送っちゃったのである。

と書いてきたら、WEBの中にこれまでクリックしてなかったshiblogを発見した。まだ全部読んでいないので、面白いのを発見したらぼくのブログで紹介しちゃおうとたくらんでいる。著作権侵害で告発されることはないと勝手に思っているのだ。

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この記事へのコメント

torigen
2006年04月16日 04:40
IKEGAMI的探訪は果てしなくってトコですか?

いやぁ、渋谷さん。宇宙感があるんでしょうね?独特の…。
で、別に廻りに迎合しなくても良いじゃんみたいな枯れかたがあるような…。うん、渋いっス。
J・AGE
2006年04月16日 09:18
IKEGAMIさんをはじめ、皆さんはものすごく引き出しが多いですね~。引き出しが多くて中身もたくさん入っているのだけれど、いっぱいになると新しい中身を入れずに中にはいっているものだけで半生を過ごす人が大変に多い中、皆さんはいつも新しい引き出しに何かをいれようとマインドを広く広げておられる。
昨日、広い大陸から帰ってきて、しみじみ感じました。
泥水飲込
2006年04月16日 21:00
また聴かねばならぬCDが増えた。
IKEGAMI
2006年04月16日 21:05
コメントありがとう。

渋谷さんの音楽は、もちろんファンク系のものではありませんが、Toriさんが言うように独特の宇宙感に満ちています。ニューヨークの仙人ギル・エバンスはミュージシャンたちの絶対的な信頼と尊敬を得ていましたが、渋谷さんも同じです。Musician's musicianなのです。
でも美しい音楽に心を奪われすぎると、彼の芯で燃えているラディカルな感受性を見逃します。ぼくは渋谷さんの音や文章をあるがままに受け止めたいと思って年月を過ごしているうちに、ずいぶんと鍛えられたと思っています。
泥水飲込
2006年04月18日 18:09
しかし。例えばただ音楽が好きで知り合ったはずなのに、ワンちゃんだ、プラモだ、福祉だと、話が広がるなんて。
しかも、障害児の父親として、気になる同じ県内の施設が~なんて。
どこかで、何かが、繋がっているとしか思えないこのごろです。
ちなみに「ミュージシャンズ・ミュージシャン」って言葉に弱いです、私。
2006年05月04日 12:14
はじめまして。僕は、ジャズは好きですが、ここ十年くらい、ジャズなんかど~でもいいと思っていて、「渋谷さんさえいればそれでいい状態」になっています。(笑)ジャズを聴いているのではなくて渋谷毅の音楽を・・というか渋谷さんそのものを聴いているって感じです。

渋谷さんの凄いところは、60~70年代に「はっぴいえんど」などを生で見て感心し、自分の仕事(CM)に起用したりしているところで、このあたりは普通のジャズマンにはできない先見性と行動力です。だから、座談が抜群に面白い。僕みたいな世代の違う素人の前でもとびきり深くて面白い話をしてくれるので、感動します。秋満さんと八大さんと安田南さんとはっぴいえんどと美潮さんと渡さんの話を同時に語れる人が何人いるでしょうか!(笑)

渋谷さんが故高田渡さんとツアーをしていたのも、渡さんの歌が本当に好きだったからやっていた。知らない人が見たら「単なるふたりの酔っぱらい」ですが、あのふたりが並ぶのを見ているだけで至福でした。高田渡の死を報じたメディアはほとんど触れていませんが、渡さんの最期の共演者は渋谷さんでした。

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