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この男はカリフォルニアのサンディエゴに住むぼくの従兄弟である。 生まれはテキサスのヒューストン。1945年生まれだから、ぼくとは同世代で妙にウマが合う。ちょくちょく、妹、弟を連れて日本にやってきて、穏やかな休日を楽しむのだ。 郷に入らば従えで、着物を着て和食三昧。蕎麦もちゃんと音を立てて食べる。中華料理も大好きで茄子の味噌炒めや五目堅焼きそばを作れといって、ぼくの家事労働量を増やしてくれる。風呂に入ると、一番風呂なのに出るときについお湯を抜いちゃうなんてこともやらかしてくれるから、目が離せない。 というのはウソで、これは1978年の写真だ。 男の名前はBenard Ighner(ベナード・アイグナー)。知る人ぞ知る「エブリシング・マスト・チェンジ」の作詞・作曲者で、ヴォーカリストでもある。この曲が知られたのはクインシー・ジョーンズの「バディ・ヒート」にベナード自身のヴォーカルで収められ、世界的なヒットとなってからだ。 「ベナードはA&Mのスタッフ・ライターで、いい曲を書いていた。曲もよかったけれど私が注目したのは、かれの声だった。最初に聴いたときにダニー・ハザウェイのようになれる才能だと思ったね」 とは当時、飛ぶ鳥も落とす勢いだったQことクインシー自身のベナード評である。 やがてこの曲はジョーイ・ベンソンやバーブラ・ストライサンド、ニーナ・シモン、ランディ・クロフォードら多くのミュージシャンによってカヴァーされる「ニュー・アメリカン・スタンダード」となったのだが、誰よりも早くベナードのベルヴェット・ヴォイスに着目したのが日本でアルファ・レコードを経営する村井邦彦であった。彼はベナードのアルバムを作り、日本発で全世界に売り出そうと思ったのだ。 日本とロスアンゼルスで録音されたベナードのアルバム「リトル・ドリーマー」は1977年の暮れくらいにリリースされたように記憶しているが、この日本の音楽市場にとってのニューカマーのLPは大きな話題になることはなかった。 ぼくがそんなベナードと初めてあったのは78年の初夏。アルファ・レコードからインタビューのオファーが来たのだ。といっても、メインのオファーはLAで新作を録音中の吉田美奈子の取材に行ってくれないか、“ついでに”去年アルバムを出したベナードにもインタビューしてくれというものであった。当時のぼくはかなり突っ張っていたので、取材前、インタビュー前から「書きます」、「載せます」なんてことは言えないし、レコード会社のプロモーション経費で海外に行くこともお断り。興味があったら自分の経費で行くので、取材機会を作ってくれることで協力いただければ結構、なんてことを公言していた。結局、NYに行くスケジュールを前倒しにしてLAに寄り、吉田美奈子の録音現場(たしかウォーリー・ハイダー・スタジオだった)を覗かせてもらい、2,3日後にベナードとランチ・インタビューということになったのだった。 サンセットのメキシカン・レストランに、2メートル近い長身の黒人が現れた。人懐っこい笑顔で、 「あなたがIKEGAMIさんですか、はじめまして、ベナードです」 と日本語で話しかけてきたのだ! 彼は単純なフレーズの日本語を絶妙に使う。ほとんど外人訛りもないので、話せるのかと思わせるのだが、次の言葉は英語になってしまうのである。ぼくだってアメリカに行くようになって3年目(1年に一度、ひと月ほどの滞在であった)、自分の考えをちゃんと伝えようとすると全ボキャブラリーを使いまわして説明しなくてはならない。だが、言うべきことは言おう、とベナードに対し、 「今日のインタビューを雑誌に載せるかどうかはまだ決めていません。もし、面白い話ができたら載せさせていただきます」 と突っ張ったのだ。 「それはジャーナリストとして当然のことです。そう言ってくれるあなたは信用できます」 という言葉がベナードから出てきた。ぼくらは日本での「リトル・ドリーマー」録音時の話し(幸い、レコーディングに参加した渡辺香津美、村上“ポンタ”修一らが親しかったので、大笑いが出来た)、Qの話し、などをすることになったのだが、彼がアメリカの音楽ビジネスのさまざまな方法にフラストレーションを持っていることが分かり、おおいに盛り上がったのだった。 そして、その年の12月、ベナードは弟のキース(サウスポーのベーシスト)、妹でヴォーカリストのサンディ(この妹が美しい!)を連れて日本にやってくることになった。紀伊国屋での伝説的なコンサート(アルファ・フュージョン・フェスティバルというタイトルの3日間で、YMOの初コンサートでもあり、吉田美奈子、ニール・ラーセン=バジー・フェイトン・バンドが出演。その様子の視察にA&M副社長で有名なプロデューサーでもあるトミー・リピューマが来日した)に出演するためだ。ぼくが司会を頼まれていることをベナードに伝えると、 「おー、アンユージャルな司会になりそうだ。面白い!」 と言って笑うのだった。 コンサートが終わると、帰国便を変更して2,3日間日本でゆっくりしたいという。3人分のホテル代がもったいないから、当時所沢に住んでいたぼくの家でよかったらどうぞと言うと、3人は大喜び。 「べつに観光したいわけじゃあないから、3日間、トコロザワ・レジデント・ライフができればいい」 というわけで、3人は近所のスーパーに買い物に行き、なにやらおかしな料理を作り、着物を着て、夜な夜なみんなで歌うという楽しい日々を過ごすことになったのだった。 そんなこんなで、ぼくはこの男と30年も付き合っている。 従兄弟、と呼び合うようになったのはトコロザワ・ライフの夜に、黒人独特の「ヘイ、ブラザー!」という言い方について話したときからだ。そう呼び合うのは、どうも陳腐で嫌だと言ったら、 「じゃあ、黒人のイントネーションで“Hey、Cousin!”って言うのはどう?」 と普段は無口なキースが提案したのだ。発音はCoudun(カドゥン)に近い。 以来、ぼくらは 「ヘイ、カドゥンIKEGAMI!」 「カドゥンBenard!」 なのである。 このカドゥン、困ったことにひどく頑固!そのために絶好のビジネス・チャンスを逃すこともしばしばで、最大のものはクインシーのプロデュースを断ったことだろう。アルファ・レコードがセカンド・アルバムの準備を進め、Qにプロデュースを依頼したらOKが出た。それなのに…。 「Qについては尊敬もしてるし、感謝もしてる。でも、いまの私の音楽はQの音楽に対するイマジネーションと違うところにある。だから、セルフ・プロデュース以外はやりたくない!」 と断ったのだ。もし、あのときクインシー・プロデュースのベナードのアルバムが作れたら、日米ともにブレークしてただろうね、というのが彼を知る音楽関係者の正直な気持ちなのである。 「でも、死ぬまでに、いつか、ドカンと行きそうなきもするんだけどねえ」 と話しているうちに、30年が経過してしまった。 だが本人はいたってマイ・ペース。数年前にサンディエゴのかれの家に立ち寄ったら、相変わらずの笑顔で、 「ヘーイ、カドゥンIKEGAMI、元気い?(日本語である)今晩、すきやきやろうよ。キースとサンディも呼ぶからさ」 なのだった。 最近になって、Benardで検索したら、立派なHPが出来ていた。 www.benardighner.com/ である。何曲かを試聴することもできるし、ディジー・ガレスピーによってプロ入りして以来の写真も見ることができる。ぼくはそこからE-MAILを送ってみたがまだレスがない。 どんなメールがくるか、楽しみに待っているところだ。 |
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ニーナ・シモンの娘がメアリー・Jに抗議、「母は麻薬中毒じゃなかった」
多くの女性アーティストたちに影響を与えたジャズ/ソウルの伝説的なシンガー、ニーナ・シモン(Nina Simone)の伝記映画でニーナ役を演じるメアリー・J.ブライジ(Mary J Blige)だが、彼女がニーナについて語った発言に対し、ニーナの娘が抗議していることが分かった。 ...続きを見る |
サッカーはエンターテインメントだ! 2010/10/22 19:58 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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く〜っ、さすが。 |
半斤八両 2009/06/13 20:47 |
ホント。おもしろいです。アメリカに初めて留学した頃だったか、テキサス出身の人たちは一筋縄ではいかない頑固者が多いと聞きましたが、満更ステレオ・タイプでもなさそうですネ。I'M TEXAN!(テクスンと読むらしい)という確固たる自信とプライドがあるとかで。他州の人にも有名だとか。LINK先のウェブを訪問して音や画像を体験してきました。重厚な感じです。Qさんとは全然違う感じだとわかりましたゎ。面白いことにHIPHOPのDJでもテキサスのClubでは、Chop&Screwといってビックリするほど(ドーナツ盤を33R.P.Mで回すくらいに)ゆ〜っくりと回して重く深く今の若者たちがノッているみたいです。アメリカは広いので、地域地域の特色がクッキリでますね。テキサスだけでも日本の本州の面積の20倍、という文章を英語の授業で教えた記憶があります。これら所沢でのモノクロ写真たち、とてもいい感じで撮れてますが、IKEGAMIさん撮影ですか?(炬燵に入ってヤカンで急須に湯を注いでるのもしっかり見ましたヨ。w)ところで個人的な質問ですが、YAMAHAの岩崎さんってご存知ですか?Gさんが気にしていましたので。 |
chi-B 2009/06/14 00:56 |
おふたりさん、どもです。 |
IKEGAMI 2009/06/14 08:04 |
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