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2月21日、東京・初台のオペラシティで山下洋輔〜セシル・テイラー・デュオという“とんでもない”コンサートがあった。日米のフリー・ジャズの巨人が即興で火花を散らすステージを待ち望んで30年。コンサート・ホールに入ると、76年のモントルー・ジャズ祭のワン・シーンがまるで昨日のことのように頭の中に甦ってきた。 山下洋輔トリオの出演日は、サン・ラ・アーケストラ、山下トリオ、そしてセシル・テイラー・トリオというフリー・ジャズ・ファン垂涎の企画だ。最初に登場したサン・ラがやってくださった!半裸のダンサーたちがエリントン・ナンバーで舞い踊り、とどめはニューオリンズ・スタイルの曲で場内1周パレード。もう場内総立ちの大興奮となった。これでは後から出る2グループはこの余波をまともに被ることになるだろう。 そのザワザワの中でわがトリオのステージ・セッティングとなった。主催者側のローディーが森山さんのドラム・セットを所定の位置で組み立てているのだが、仕事が遅い!「サン・ラはねえ・・・」なんて雑談してる場合じゃあないだろう!!隣りにいたカメラマンの市川幸雄くんを見ると、彼もイラついてたらしくステージを指差すのである。以心伝心、阿吽の呼吸、ぼくらは席を蹴ってステージに飛び乗った。セキュリティが「下りろ、下りろ」と言いにきた時は、もうセッティング完了。そりゃあ悪うございました、お邪魔しましたね、ってもんだ。 山下トリオの演奏が始まった。案の定、聴衆の反応は鈍い。肘打ちにもワーっと来ないのだ。よーし、騒いじゃえ、とこれも阿吽のめくばせ。2曲目の中ほどからは、まあ、フリージャズの大好きなヨーロッパの聴衆に戻って、演奏に反応するようになったのであった。そこに、暴力的エンターテイナーの坂田明さんが「月の砂漠」入り「ゴースト」(アルバート・アイラーの曲)&ハナモゲラ・ボーカルをかましたものだから、場内は再び大騒ぎだ。かくして、山下トリオはその実力でヨーロッパ・フリー・ジャズ・シーンの人気グループとして位置付けられることとなったのである。 そうだ、ぼくがここで書きたいのは、この山下トリオを、ステージの袖でジッと見ていたのがセシルだったということだった。前置きが長すぎた。セシルは山下トリオの演奏が終わると、「今日は長くなりそうだな」といって、いったん楽屋に戻り、空手着のような戦闘服に着替えてステージに上って深夜12時過ぎまで、2時間以上の演奏を続けたのであった。このことを山下洋輔に話すと、「うん、あの巨匠はかなり俺達のこと意識してるらしいって、ホルスト(ホルスト・ウェーバー=ENJAレコードのオーナーでトリオのヨーロッパ・マネジャー)が言ってたな。まあ、同じフリーで、同じピアノ。トリオの楽器編成も同じだからな。いつかはお手合わせをしていただきたいと思ってるんだけど、今は無理だろね」というお言葉が返って来たものだ。 そして、30年。ついに「お手合わせ」が実現の運びとなった。このランダム・ダイアリーではコンサートの内容には触れない。改めてPostを立て、ジックリと書きたいからだ。(日記でヨカッタ、ヨカッタなんて書いたら両巨匠に失礼だから・・・) 一言だけ書いておきたいのは、アメリカの巨匠の音の大きさにぼくの口はずっと開きっぱなしだったこと。77歳なんてウソでしょう、というくらいでかいのだ。そして、ダイナミズムとセンシティビティの絶妙なバランス!目の前で、夢のような時間が経過していくのであった。 コンサート会場に足を踏み入れた時から、なんだか妙な気分に襲われていたのだが、それはやっと実現したデュオへの期待だけでなく、会う人の殆どが「知った顔」のようで、ただ老化しているだけ、というまるで同窓会のような感じになっているからであった。 あのトリオのフロントで暴れていた坂田明、山下洋輔がフリー・スタイルのトリオを結成(69年)する以前から的確なアドヴァイスを送り続けた相倉久人、トリオの2代目マネジャーの岩神六平、トリオを中核としてイベントを制作してきた川村年勝、物書きでは青木和富、悠雅彦という顔がズラリと並んだのだ。 70年代半ばからのワン・デケイド、ぼくらは山下洋輔トリオ無しには夜も明けないという日々を過ごしてきた。貞夫なにするものぞ、コルトレーン亡き後のアメリカのジャズなにするものぞ、頭でっかちなヨーロッパのフリーなにするものぞ!オレタチには山下トリオがあるじゃあないか。 これはまさしくひとつの「時代」であったのだ。と思った瞬間、ぼくのブログに寄せられたコメントを思い出した。 >文化には「場」が必要です。「場」を作るひとも必要。 時代が「場」を作り、時代が「場」を壊す。 でも、一瞬間だけ真理を見ることがあります。 by Asianimprov でも、この夜の「真理」、「夢」は一瞬間ではなく、もっともっと続いてくれないか、と思ったのだった。 写真は左より相倉久人、坂田明、山下洋輔。あの「時代」には、いつも新宿ピットインや、「石の家」、「ジャックの豆の木」などで顔をあわせていたものだ。 |
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What a great flow! It is surely inspiring. |
chi-B 2007/02/24 15:03 |
池上さんのこの生き生きとした語り口でセシル〜山下さんを知った20-30代の若い方が、村上春樹さんの「意味がなければスウィングはない」を読んでCDを購入し、「?」と音楽をよく理解できなかった若者と同じように、セシル・テーラーの名盤を購入して唖然とするのではないか?・・・・と(笑) |
板前 2007/02/24 17:38 |
chi-Bちゃん、早速よんでくれてありがとう。 |
IKEGAMI 2007/02/24 20:45 |
IKEGAMIさんのpostを読んでると、その頃の興奮がリアル・タイムに経験しているような錯覚に陥りそうですネ。 |
torigen 2007/02/24 21:28 |
時代もぼくも疾走感を求めていたように思えます。疾走しすぎたので、現在はそのひっくり返しの喪失感が大きい(笑)。失踪したいくらいです。 |
IKEGAMI 2007/02/25 02:32 |
よく八ガ岳なんかに“失踪”するじゃぁないですか?うぁはは。 |
torigen 2007/02/25 10:34 |
川村さんとつい先日、ネットで再会することが |
クニオパトラ(in mixsi) 2007/02/28 09:53 |
おや、長谷さんじゃあござんせんか!お久しぶりです。 |
IKEGAMI 2007/02/28 12:54 |
同じ時間を同じ場所で過ごした人達だけができること、「同窓会」! |
J・AGE 2007/02/28 16:43 |
>DVD |
クニオパトラ 2007/02/28 18:23 |
わっ。小生の書いたものを引用して下さり光栄です。まいったなぁ。照れます。(^^;) |
asianimprov 2007/03/08 10:29 |
上記の「詩とジャズ」の催しは1967年だと判明しました。白石かずこも詩を読んだとのこと。まさに60年代後半ですね。このあたりから洋輔さんが疾走しはじめたのですが、僕は子どもでしたので、リアルタイムでは知りません。 |
asianimprov 2007/03/08 19:16 |
asianさん、貴重なコメントありがとうございます。「詩とジャズ」の蜜月時代が懐かしい! |
IKEGAMI 2007/03/09 01:38 |
IKEGAMIさん、少し心配になってきました。 |
torigen 2007/04/24 19:36 |
What's up?IKEGAMIさん。お元気ですか。 |
chi-B 2007/05/05 14:29 |
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