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zoom RSS ぼくと犬の物語 8

<<   作成日時 : 2006/04/24 18:28   >>

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MAXにセラピー犬の活動をさせたいと思うようになったのは、前に書いた「ヘンリー,人を癒す」という本を読んだからだった。
人が犬と暮らすのは、飼い主に示す無条件の信頼が愛しいからだろう。だから、この信頼と忠実さに応えられない飼い主は冷血の人非人!応え方はともかく、応えるなんて考えたことない人という人は犬なんか飼っちゃいけないのだ。ちょっと複雑には人間以外の動物と互いに理解しあうことの楽しさっていうものもあるが、多くの犬好きは犬のけなげさに癒されるのである。お年寄りにとっては、生きている動物の体温に触れることで、生き物の持つ優しさに安堵する人が多いらしい。

以前住んでいたマンションの近くに特別養護老人ホームがあって、MAXとその前を通りかかると車椅子に乗って散歩に出たお年寄りのなかに「可愛いねえ、触ってもいい?」と話しかけてくる方がいた。はい、ぞうぞ、と言ってMAXを車椅子の横に座らせる。おばあさんはMAXの頭を撫で、顔いっぱいに笑みを広げるのだ。そうかあ、ひょっとして優しいMAXはセラピー・ドッグになれるかもしれない、とこれは浅はかな親ばかの考え。
セラピー犬についてネットで調べてみると、JAHA(社団法人・本動物病院福祉協会)や「北海道ボランティアドッグの会」など、いくつかの団体が独自のセラピー(内容の多くはセラピー=治療ではなく、アニマル・アシステッド・アクティビティと呼ばれる触れ合い活動)活動を行っていることがわかった。各団体が認定するセラピー犬の審査をクリアするには相当の訓練が必要であるが、これまでのMAXの躾に対する追従性や基本的な性格を考えると、できないことではないと思えた。だが、問題がある。ほとんどが1歳以上で、避妊・去勢が必要なのだ。(まあ、そうだろう。セラピー活動時に異性の魅力をちらつかされたら、普通の犬の本能はどちらをとるか明白!)ぼくも世帯主も、やがてはMAXの子供をと思っていたので、そこで「んー・・・」となってしまったのだった。

前に書いたが、実はこの時期、ぼくらは深刻な問題に直面していた。住んでいたマンションの管理規約にMAXは適合していなかったのだ。犬は2頭までOKというマンションだったのだが、大きさの制限があった。規約が認めているのは、体高50センチ以下の犬だけ!要するに大型犬は飼えないということである。管理規約を詳しく読まないで大型犬を飼ってしまったぼくらのミスである。

(3年前のことだが、当時、分譲新築マンションの8割はペットの飼育可。だが、大型犬可のマンションはその1割もない、ということが後で調べて分かった。現在は、何部屋かのみ大型OKと変わりつつあるが、それでも3割以下である。こういう管理規約のナンセンスさは問題に直面してみないと分からないものだ。例えば、保健所に収容されている純粋種ではないいわゆる雑種=ミックスをもらって育てようと思っても、どれくらいの大きさになるかはその時点で?である。といことは、ペット・ショップで犬種の明らかな商品としての犬を買ってくる人のみOKということなのだ)

ぼくらはマンションの掲示板に特例願いを貼り、異論がないかを待つことになった。掲示期間の最終日、数人が「認めない」、「決まりは守って欲しい」と管理組合に申し出た。さあ、困ったことになった!
マンション内で親しくしていた人がアイデアを出してくれた。「MAXはセラピー犬の訓練を始めたんだから、管理規約の<但し、盲導犬、その他の介助犬は除外される>っていうのがあるじゃない。セラピー犬の認定とって、堂々と暮らそうよ。だって、犬の個性とか躾とかをまったく考えないで、物扱いしているような規約自体がおかしいもん」と言ってくださったのだ。
管理組合理事会にセラピー犬認定をとれば規約除外なのかと尋ねると、理事会の討議にかけられ、理事会としては「お宅のような考えで犬を飼育されていることを考慮して、理事会が特例という形で反対する人に働きかけます」ということになった。
すると、「理事会は特定の人の利益を図るのか、理事会が介入することではない」、セラピー犬が除外される犬かどうかは最終的には裁判所が決めることだ、という人まで現われることになった。(これについては、マンション管理会社の弁護士が判例とか、公的な規約の解釈例を例にとり規約から除外される犬というガイドラインを出した)
さあ、反論は?
「1歳にならないと認定されないなら、それまで規約違反の大きさなのだから、外で飼って認定されてから戻してくれ」
という声が匿名希望で、管理人から返ってきた。
「出て行けとは言ってない。犬を出してくれといってるんです」
という、管理人経由の声が日増しに強まった。(管理人が数人の反対意見の代弁者になる特別の理由があったのだが、もうここでは書かない)
1軒、1軒を尋ね、規約改正の働きかけをすれば、何とかなるだろうという感触はあった。だが、ぼくらは、もうそのマンションに住む気がなくなってしまったのだ。MAXがセラピー犬に認定されるかどうかは別にしても、「介助犬は必要だが、どうして自分たちがその育成の犠牲にならなきゃいけないの?」という住民エゴがハッキリ見て取れたからである。
この戦いをやめたことについては、多少の後悔は、ある。断固戦って、人と暮らす犬の社会環境と犬に対する理解を高めるべきかもしれなかったからだ。MAXを去勢せずにセラピー犬認定が取れるんだったら、事情は違っていたかも知れない。だが、ぼくらは陳腐な物言いと悪意に疲れてしまったのだった。

ぼくとMAXは、ある知的障害者の施設を訪れた。犬好きの障害者にとっては、MAXに触れることは楽しい時間に違いない。MAXに舐められながら、いきいきと遊び、笑っているのだ。この施設にはあるボランティア・グループが定期的に訪れ、犬と障害者のコミュニケーションを作る活動を行っている。ところが、そのスケジューリングや犬に対する接し方という点で、心から歓迎されてはいないことも知ってしまった。もし、活動先が負担に思うような活動になったり、ディスコミュニケーションが生じると、活動の意味がなくなってしまうということもあるのだ。

犬も人も、楽しく、でも豊かに生きることは簡単ではないのである。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
お互いが本来の権利(この場合、一定の生活のしやすさ、くらいの意味です)で議論していくのはよいことですが、やはりこの「悪意」に根ざすところは本当に嫌です。
最近はどうにもこの「悪意」に耐えられず、自ら戦線離脱をすることもしばしばです。
「善意」と「正義」の押し売りも辟易しますが、なんというか互いにホンワカするような、苦しい人がちょっと楽になれるような「気持ち」に根ざした生活がしたいです。
J・AGE
2006/04/24 19:06
住民エゴの問題は犬に限らずたくさん見かけますね。ゴミ焼却炉、葬儀場、墓所、療養施設etc・・。
「私は生涯を清潔に暮らし、心身ともに健全だから病気にもならず死ぬことも無い。人のお世話になることは多分無いでしょう。
盲導犬やセラピー犬が登場するドラマはそれなりに感動するから大好きだけど、それはテレビの中の出来事。どなたか奇特な方が、知らない町で育成していて、この地域には関わりがないわね。
何しろ清潔で小洒落た暮らしをモットーにしているんですもの。そうだわ!ちっちゃな流行りのワンちゃんをアクセサリー代わりに飼うのもいいわね♪ たいした躾けも、しなくて済みそう。」

・・「共存」「共生」って言葉だけ独り歩きしていますが、現状は寂しいですね。突破口は、飼い主のモラルの向上に行き着くのでしょうか? IKEGAMIさんが日々、人と犬の豊かな関係を築くため他の飼い主さんを啓蒙され、小さな小さな輪が広がりつつあるのを実感しています。大きな輪にしたいなぁー。


horirin
2006/04/25 13:25
陳腐な物言いと悪意に疲れる…凄くわかります。

同じ空気を吸っていたくない!そんな感じとでも言いますか。
何処にでも居るっていうか、どちらかというと増殖してませんか?
ネットの世界でも随分たくさん棲息してますヨ、遺憾ながら。
torigen
2006/04/25 19:25
う〜ん。これは難しい。
犬自体が嫌いな人は規則を楯にしてくるだろうことは明白。規則がある以上は簡単には例外を認めにくいでしょう。
こちらの「志」を理解できる人間はすぐにOK出すでしょうし、住民エゴ丸出し、既得権主張、etcの人には全く理解できないのが現実なのでしょか。
福祉や介護も「大変ね〜」とは言うけれど自分の身には降りかからないと思っている人がほとんど。自分の問題としてそれに直面しない限り判らないのが普通。
とはいえ「志」ある行動しか現実を変えていかない。アナコンダ飼ってる訳じゃないんだけどねぇ。

泥水飲込
2006/04/25 19:27
皆さんへ
いろいろなご意見ありがとうございます。ここにコメントを寄せてくださる方々は、知的マイノリティーというか、洞察力豊かな方ばかり。でも、世の中ってそういう人はやっぱり少数です。だって、あのコイズミの支持率下がらないんだもん!

ぼくの場合、当事者だったことが残念です。もしこの問題がほかの住民だったら、先頭にたって応援しちゃっただろうし、不動産会社が原型を作ったおかしな管理規約の変更を真っ先に提案したと思います。ただ、ダイアリーにも書いたようにこういうことが現実に起こるのは、犬と人の作る文化の未成熟さと飼い主の無知があるからだと思います。あと何十年したら、欧米なみになるんでしょかねえ。

IKEGAMI
2006/04/26 01:25

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